雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

「ジンは、紗矢花のことが好きなのかな?」

「そんなこと、ないよ。他に好きな人がいるみたいだし」

「――じゃあ、紗矢花は?」


聞いているうちに自分が情けなくなってきた。

あからさまに二人の仲を嫉妬している気がする。

ジンが彼女に触れるどころか、近づくことすら許せない。


「私があんな風にしたのは……ジンが響に似てたからだよ? 単に雰囲気が重なっただけ。別に、変な仲じゃないからね?」


紗矢花は焦ったように否定してきた。


「そう?」


それにしては、ただならぬ関係に見えたけど。

二人は同じ高校だったというのだから、過去に何かあったとしてもおかしくはない。


「紗矢花はやっぱり、彼氏と別れたことを後悔してるんだね」


ジンを黒瀬響に重ねて抱きついていたなんて。別れた男の代わりにしていたも同じこと。


紗矢花は軽く唇を噛み、うつむく。

俺は彼女の隣に座り、そっと髪を撫でた。

今にも泣き出しそうな表情に、彼女を抱きしめたい衝動にかられる。

指先をきつく握りしめ、どうにかそれを抑え、静かにつぶやく。


「この前、紗矢花に嘘をついた」

「……嘘?」

「そう。好きな人はいない、っていう嘘」

「じゃあ……遼には本当は、好きな人がいるの?」


大きな目で、若干強張った顔をして、彼女は聞き返してくる。