雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

ピアノの陰で、二人は親密そうに寄り添っている。

それを見た瞬間、いくつもの想いが湧き起こった。


気兼ねなく紗矢花に優しくできるジンへの嫉妬。

紗矢花が頼り甘えるのは俺だけではないという失望。

そして先程の女は、ジンのことを想っているのだと知った……。


二人はお互いを見つめ合っていて、こちらに気づく様子はなかった。

視線を背け、今来た道を戻る。


紗矢花は、彼氏と別れたからといって簡単には手に入らないらしい――。





紗矢花がリビングに戻ってきたのはしばらくしてからだった。

浮かない表情でソファに座り、窓の外を眺めている。

温かい紅茶をテーブルの上に置くと、やっと俺の方を見て「ありがと……」と力なくつぶやき、また外に視線を戻した。


「……ジンと仲が良いんだね」


俺は別のソファに座り、紅茶を一口飲んでから彼女に話しかける。


「ごめん、さっきピアノの部屋の前を通ったら、二人がいるのを見てしまって」

「え……。まさかアレ、見ちゃったの?」


紗矢花は目を見開き固まったあと、気まずそうに紅茶を口に運んだ。