雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

彼を横目で観察し、その理由を考える。

以前なら、ジンは彼女がいるいないに関わらず優しくしてくれたのに。

私の視線から逃れるかのように、彼はドアの方へ歩き出した。


「もしかして、好きな子でもできたの?」


“好きな子”という言葉に反応したのかジンは立ち止まり、私にきつい眼差しをくれる。


「本気で好きになれる人、見つけちゃった?」


質問には答えず、何かを思い出したようにジンはこちらに向き直った。


「そういえば紗矢花、愛梨に遼を紹介するとか言ってなかったか?」

「ああ、うん……」


もう紹介する気はそれほどなかったけれど、一応頷いておく。


「遼を紹介するのはやめておけ。あいつには、ずっと前から好きな女がいるから」

「――何それ。遼は好きな人はいないって言ってたよ?」


しかも、ずっと前からって……?