雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

自分に合う人ってどんな人?
響はやっぱり私には合わなかった?

確かに、響には私じゃダメなのかもしれないと感じる。

もっと、心に余裕のある人。彼を自由にしてくれる人じゃないと……。


「ねえ。あの曲が聴きたい」

私は椅子から立ち上がり、ジンに席を譲る。


「弾いて? 『雪色の囁き』」


遼が作曲した中で一番好きなこの曲は、今の気分に合っているような気がしてリクエストをした。

ジンは溜息をつき、渋々ピアノの前に座る。


「もちろん、歌ってね?」


斜め後ろに立ってそうねだると、彼は不機嫌な一瞥をよこし、それでも素直にピアノの伴奏に合わせ歌ってくれた。


ジンの低くて甘いハスキーな声が昔から好きだった。


――白と灰の狭間で彷徨う君は
雪よりも儚く……


切ないバラードに乗せてジンの声が部屋を満たす。


――忘れられないのは
あなたの笑顔だけでなく

好きと囁く透き通った声……