雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

『あいつとは縁を切る』

『もう一度やり直したい』


私の欲しい言葉は何もくれなかった。

彼にとって、私はその程度。
失っても困らない存在。


『俺が大切なのは紗矢花一人だけ』


どれが嘘でどれが本当なのか。
真相は謎のままで終わったけれど。

信用のできない男とやっと別れられたこと――その決断は間違ってはいないのだと、心に強く刻みつけていた。





日曜日の正午。

私はまた遼の自宅へ顔を出していた。


「紗矢花、顔色悪いね」


玄関で私を一目見るなり、遼は心配そうに眉をひそめた。

一緒に住んでいる兄には何も気づかれなかったのに……。

私が昨日の夜、部屋で泣いていたことも。
化粧で隠し切れない、まぶたの腫れも。

遼には全部ばれている気がした。


「昨日、響と別れたの」


窓辺に立ち、曇り空を眺めて小さくつぶやいた。


「そう……なんだ」

「私、間違ってないよね。彼と別れてよかったんだよね……」