雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

半分ヤケになったような台詞が私の口から流れ出す。
響は備え付けの灰皿で煙草の火を消しこちらを見た。


「なあ、本当にもう信用は取り戻せないのか?」

「……無理だと思う。響といても疲れるだけだよ。私はずっと、いつ捨てられてしまうのか不安ばっかりだったから」


響はシートに背を預け、深く溜め息をつく。


「――じゃあ。最後にこれだけは信じて欲しい」


大きな手が、膝に置いた私の手を掴む。


「俺が大切なのは、紗矢花一人だけだから」

「………」


私は無言でその手をよけ、バッグから取り出した指輪のケースを差し出した。


「これ、返すね」


響はそれを受け取らなかったので、私は車のドアを開けシートを降りたあと、そこへ置いた。

強くドアを閉め、彼の車に背を向ける。


送ってもらう気はなかった。

これ以上一緒の空間にいるのは耐えられない。

家まで歩いて戻る私を、響は追いかけてくることはなかった――。