雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

「そんなの……私を繋ぎ止めるためなんじゃない? きっとその人だって、元カノなんだから指輪ぐらい持ってるでしょ?」


響は僅かに窓を開け、タバコの煙を逃がす。


「あのな、正直に言うぞ。俺が好きなのはおまえだけだ。あいつとはすでに終わってるんだし、何とも思ってない」


強い視線で私を捕らえる響。

でも……。私はゆっくりと首を振る。


「響の言うことは信じられないよ」


胸の中は嫌な想いで充満し苦しくなって下を向く。


「信じられない、か」


響は自嘲気味に笑った。しばらく沈黙を保ったあと…再び口を開く。


「それは――。別れるってことか?」


別れる………その言葉に私は顔を上げた。

まさか彼の方からその言葉が出るとは思わなかった。

一つ深呼吸をしてから、これまでずっと溜めてきた言葉を吐き出す。


「そうだね。……別れよう」


はっきりと言葉にしたことで後戻りはできなくなった。


「私はただ、響と結婚したかっただけ。でも響には他にも大事な人がいるから、勝ち目がなさそうだし諦めるよ」