雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

すっと目をそらされたことで確信する。


「――違う、二股なんかじゃねぇよ」


彼の言葉はもう、信じられなかった。


「嘘なんかつかなくていいよ。その人とズルズル付き合ってたってことでしょ? 私に隠れて会ってたんでしょ?」


今まで響に感じていた女の気配。その正体がわかった気がした。


彼の部屋に落ちていたピアスや長い髪の毛。

大事なイベントの時に限って、一緒にいられる時間が少ないこと。

時々、いつもより早く帰されること。


……全て、他の女と会っていた証拠に他ならない。


「浮気じゃなくて、まさか二股だったなんてね」


私の口元に暗い笑みが広がる。
浮気ならまだ我慢できたかもしれないのに。


「それとも、私が浮気相手なの?」


合鍵を渡されていたのはもう一人の女の方だから、私はその女の次?


「だからそんなんじゃねえって。なんで俺の言うことを信用しない?」


目にかかる前髪をかき上げ、響は苛々と私を睨んできた。


「だって、響がその女の人とは何もないって言い張っても、目に見える証拠がたくさんあるから。部屋に髪の毛が落ちてたり、合鍵をくれなかったり」

「……だったら、どうして俺が指輪をやったと思ってる? 二股や浮気だとしたら、お前に指輪なんかやらねぇよ」


響は上着の胸ポケットから煙草とライターを取り出し、火をつける。