私が遼のキスを受け入れたのは、響への復讐のため?

それとも、遼に惹かれ始めていたから?


「ねえ、お兄ちゃん」


私はキッチンから、二日酔いで具合の悪そうな兄へ声をかける。


「――あ?」


ソファの上に寝転んでいる兄は無愛想に返事をした。


「浮気ってしたことある?」

「……何、変なこと聞いてんだよ」


額を押さえつつ、兄はソファからのそりと起き上がった。


「いいから、答えて」

「はァ? 妹なんかに誰が答えるか」


私はテーブルに出来上がったオムライスを置いて、兄をじっと観察する。


「あ! もしかしてお兄ちゃん、浮気したことあるんでしょ?」

「………」

「ね、あるんでしょ?」


意地悪く笑った私はしつこく繰り返した。

前に彼女と別れたのは、浮気が原因だったりして。


「――そういえば」

オムライスを一口食べた兄は、わざとらしく話をそらした。


「明日また遼の家に行ってバンドの練習するけど。お前も来るんなら今度は邪魔すんじゃねーぞ」

「はいはい。あ、ジンも来るんだよね? だったら少しは話せるかな」


そう考えを巡らせていたとき。

エプロンのポケットに入れていたスマホが鳴った。

私の表情が一気に翳る。

この着信音は彼しかいない。