「あぁ、それはもう俺たちの中での決まり事ですよ」
「決まり事?」
敬語が?
「敬語は、『距離』なんです」
距離……?
「いつから決まったのかは覚えていませんが、女の子と話す時は敬語。親しい間柄の人はタメ。そう区別しているんです」
「なんで?」
「なんででしたかねぇ……勘違い防止、ですかね」
そう言って彼は怪しい笑みを見せた。
「逆に取れば、女の子にタメ口を使ったら、その時点でもう俺たちの仲間ということです」
……別にそこまで仲良くなる気はない。
「俺たちは幼なじみ5人のグループなんですよ。想、蛍都、陽紀(ようき)、漆(うるし)、で、俺・辰(たつ)の5人です」
どうやら目の前にいるのは『辰』らしい。



