オモイビト



油断、してたんだと思う。

想が弟みたいで、可愛くて。


歩いた先にあった細い道。

誰も通っていないような道の端。


気付いた時には、もう遅かった。


目の前に見えるのは、想の真剣な瞳。

目がくっついちゃいそうなくらい近い……ううん、すでに触れている。


――唇に感じる、柔らかい感触――


「昴が可愛いから」


口が離れた瞬間、そう聞こえた。


「……え……」

「帰ろう」


そう言って、駅と反対方向に歩いていく想。


「……あ、想、違う、逆だよ……」

「……え、うん……」


手は、いつの間にか絡み合っていた。

想は、方向オンチなくせに、前を歩こうとしていた。


「あ、違うまだ真っ直ぐ」

「え、うん……」