家まで送ってくれた桜は、急ぐように帰って行った。
早速、私は国語辞典を開いた。
執着心の意味を何となくではなく、しっかり明確にしたかったのである。
「・・・・・・強く心が惹かれること。
心が捕らわれて思いきれないこと、か」
一人で呟いて改めて、その言葉の意味を実感する。
つまり、簡単に言えば、彼は人間に興味を抱いていない。
それは、どこかとても悲しいもののように私は思えた。
私が桜を好きになったきっかけも、きっと興味を抱き惹かれたからだ。
初めて君を見たあの瞬間、きっと私の中で何かが動きだした。
いつも思ってることと表情が反比例して、うまく周りに気持ちが伝わらなかった。
そんな私に、偽りの愛を捧げてくる男子が憎らしくて、酷い言葉をかけた時もあった。
試しに付き合ってみて、私の性格を実感して、逆に酷い言葉を言われた時もあった。
鉄仮面、人形、ロボット、そんなことを男女問わず言われた。
実際自分でもそのことは、重々承知だから、特に気にしていなかった。
でも、本当は気にしてないふりで、すごくすごく傷ついていたんだと思う。
鉄仮面はとうとう、自分の心まで隠していたのだ。
それが君に出会って変わったんだ。
自分が世界で唯一のかけがえのない存在だって、教えてくれた。
気付けばどんどん惹かれてて、今ではこんなに普通の片思いガールだ。
君がときどき、
どこかへ行ってしまうんじゃないかって、
すごく心配になる。
一生懸命掴んでないと、
雲のように
風のように
飛んで行ってしまいそうで、
私はそれがどうしようもなく怖い。
友達でもいい。
彼女にしてなんて言わない。
これ以上何も望まない。
だから、今が変わらないでほしい。