「美幸と…その…そういう関係になっちゃって…さ…。」

ヒデは語り出す。

あの頃は(美幸ちゃん)

って呼んでたのに…。

私は彼の一言、一言を聞

き逃さないように耳を傾

ける。

「あの頃、お前、忙しいかったろう…残業続きで…。」

そうだった。仕事が面白

くなり始め、残業の日が

続いていたっけ…。

「酒、飲んだ勢いで一度だけ、しちゃったんだ…。」

ヒデはお酒に弱く、飲ん

だら訳が解らなくなるん

だった。暴れたりする事

はなかったが、陽気にな

ったり、無口になったり

…でも次の日には覚えて

いない、というクセ者だ

った。

私にも反省点があったの

だ。あの頃、あまり彼と

会ってはいなかった。一

緒に暮らしてはいたが、

私が家に戻る頃には彼は

もう眠っていた。出勤が

早い彼と会わない日が続

いていた…。私は安心し

きっていたのだ。ヒデと

の関係に−−。