君はガラスの靴を置いていく






まるは勉強なんて普段やらないくせに今日は千花が居るからか妙に真面目だ。


『糸井さん、ここの数式って……?』


『あ、そこはね……』


千花は質問される度に身を乗り出して丁寧に教える。髪が邪魔にならないように耳にかけ、まると急接近。


俺はその様子を見つめながら暇そうにシャーペンで遊んでいた。勿論、問題は一問も解けてない。



『宮澤君はどこか分からない所ある?』


心配になった千花が俺に話しを振る。

分からない所ってゆーか、勉強に対する意欲が全く沸かない。追試とかになると必死にやるんだけど。


『うーん、全部』


『え、全部?多分次のテストで出ると思うから覚えておいた方が……。私で良ければ教えるから』


千花はそう言って、数式から解き方まで一から教えてくれようとしている。

まるも何だか真剣で、俺の部屋から普段は聞こえないシャーペンの音がカチカチと響いていた。



『じゃぁ、俺が解いたらご褒美くれる?』


『え……ご褒美って?』


ドキッとした表情を千花が見せる。


夏休み、勉強会、俺の部屋。この上ない三拍子。
これに便乗して色々進めたいけど残念ながら今日は二人きりじゃない。


『嘘、冗談だよ』

俺はそう言って、分かりそうな問題を適当にやり始めた。