千花はその後なにも言わなかった。

自分の気持ちなんて何一つ言えなかったけどきっと俺には待つ事しか出来ない。

先輩か俺か。それともどちらも選ばないのか。

それは千花にしか分からない。


俺は学校を出て自転車置き場まで歩いていた。
まだ昼だっていうのにこんなに静かな外は初めてだ。

もし千花が先輩の元へと行ったら俺と千花が話すのはあれで最後かもしれない。

友達になるつもりはないし、ちゃんと諦めるのならそれなりに距離をとる。それがフラれた側に出来る唯一の事だ。


『先輩』

ザクッとローファーが砂に擦れる音がして振り向くと、そこには悠里の姿。

居た事にびっくりした訳じゃない。びっくりしたのは髪をバッサリと切っていたから。


『あーこれです?イメチェンですよ。短いのも似合うでしょ?』

少し雰囲気の変わった悠里は大人っぽくなっていた。


『今から来ても授業ねーぞ』

俺は自転車の鍵を開けて車体の向きを変えた。