噂は恐らく先輩の耳にも届いてる。どんな噂でもいい気分はしないはずだ。俺の気持ちは知ってる訳だし。


『あの、流れてる噂はほとんど嘘です。体育倉庫に居たのは本当だけど体育がたまたま合同で…その…』

『……』

顔が上げられない。

宣戦布告したのは俺のくせに嘘ごときでビビってる。


『噂なんて気にしてないよ。ただもう一度宮澤君の気持ちを確かめたくて』

『気持ち?』


『うん。千花ちゃんの事、本気で好きなの?』


なぜ今こんな事を聞いてくるのか。俺の気持ちを確かめる前に俺を殴るべきだろ。

この余裕が先輩を前にする度に“敵わない”と思い知らされる。


『……俺の事邪魔じゃないんですか?俺は千花が好きで先輩から奪おうとしてるんですよ?それなのになんでそんな冷静なんすか』


千花の事好きで好きで仕方ないくせに。


『邪魔だよ。宮澤君は俺にとってね』

『じゃぁ、なんで…』


『前に言ったはずだよ。最終的に選ぶのは千花ちゃんだって』


それなら千花が俺を選んでも仕方ないって諦められるって事か?そんな風に冷静に受け入れられる?

そんな事あるはずがない。

先輩は俺が千花に出逢うずっと前から千花を想ってた。