君はガラスの靴を置いていく





『─────────千花、待って!』


慌てて保健室を飛び出して行ったその姿を追いかけた。

なんで千花があの場に居たのかは分からない。
でも手には数枚のプリントを持ってるから恐らく保健の先生に用があったんだろう。


『待って、今のは違う』

呼び掛けを無視して足を止めない千花の手を掴んだ。


『そんなの私に言う必要ないよ。手離して』


こんなに冷たい千花は初めてだ。こっちを見ない後ろ姿や掴んでる腕さえも全力で俺の事を拒否してる。


『……じゃなんで怒るの?』

『怒る?全然怒ってないよ。むしろ宮澤君が追ってきたから怒ってるんだよ』


その口調もいつもより早口。


『宮澤君って本当になに考えてるか分からない』


ポツリと吐いたその言葉に俺は掴んだ手を強くした。


『なに考えてるか分からない?それは千花もだろ』

『なんで私?』

『薄々俺の気持ちに気付いてるくせに』

『………』


なのにちょっと脈ありかもって勘違いさせる所とか、俺の事を無視出来ない所とか。

千花だって鈍感じゃない。こんだけ俺がめげずに話しかけたり接点を持とうとしてきたら誰だって気付くだろ。


『気付いてないフリしてんの?それとも本当に分からない?』


千花は無言のまま。その姿に少しイラッとしてグイッと顔を近付けた。


『分かんないなら今言おうか?』

『……』

『それとも先輩が好きだからって俺から逃げる?』