君はガラスの靴を置いていく




千花はその後なにも言わずに足早に教室へと向かっていった。


俺の事をなんとも思ってなかったら言えるはずだ。あのハプニングだって笑ってこんな事があってねって。

言わなかったのは千花の中で言えない何かがあったからだ。


それを期待せずにはいられない。


『つーか今日の宮澤ボーッとしてない?』


午前の授業が半分過ぎた頃、増田が回し読みしてるエロい雑誌を片手に声をかけてきた。


『……え、そう?』

気だるそうに返事をしながら俺は前の授業で寝たままの体制を崩せなかった。


『いや、寝てんのはいつもだけど休み時間もそのままとか珍しいじゃん。もしかして風邪ひいたとか?』

『は?風邪なんて引いてねーし』

と、反論したけど改めて言われると確かに体が熱い。しかもなんかずっと頭も痛い気がする。


『1回熱測ってこいよ。まじで顔とか赤いぜ?』

『……』


風邪?

俺が風邪をひいた?

小学校から体だけは丈夫で、学級閉鎖になるぐらいのインフルエンザにも一切かからなかったのに?

………熱が出るってこんな感じなんだ。風邪とは無縁だったから気付かなかった。