君はガラスの靴を置いていく





『宮澤、今日先に帰ってて』

放課後、まるは用があるらしく慌ただしくどこかへ行ってしまった。俺は遊びに誘ってきそうな女達を避けて足早に昇降口に向かった。


「ばいばい~」「また明日ね」と生徒達が行き交う中、俺は千花とばったり会った。

『………あ、』と先に声を出したのは千花だった。


『珍しいね、昇降口で会うなんて』

俺は靴を履きながら平常心を保っていた。


『う……うん』


何故か千花の返事はぎこちない。

周りに人がたくさん居るから?
それとも先輩と一緒に帰るから?

思えば千花と豊津先輩が付き合ってから話してなかったっけ。


『どうなの?最近』

あえて遠回しな言い方をした。


『どうって……別に変わりはないけど…』

『嘘、先輩と付き合い始めたんでしょ?』


校内であんなに一緒に居たらもう学校中が知ってる。でも何も知らないフリをして千花と話すのは少し気持ち悪いから。


千花は『うん』としか言わなくてやっぱりまた他人行儀に戻ってしまった。


『俺と話しちゃ駄目だって先輩に言われた?』


『そ、そんな事言われてないよ』


『じゃぁなんで話しづらそうなの?この前話しかけてもいいって言ってくれたのに』

『……』


ごめん、わざと困らせようとしてる。

先輩が千花を束縛するはずがないし、まして俺と話したら駄目なんて言うはずがない。内心はきっと話して欲しくないと思ってるだろうけど。

先輩に気を使ってるのは恐らく千花の方。


先輩を不安にさせたくない?
心配させたくない?

嫉妬するほど千花が優しいのは知ってる。