その時私は、学校でいじめに遭っていた。

「なんで学校きてんだろうね」

いじめと言うよりは幼いから──嫌がらせ、か。

存在自体無視されるのは慣れたけど。
聞かせるような悪口には慣れない。
悪意の視線にも慣れない。

「キモいんだけど」

クラスでペアを作る時、決まって余るのは私で。
そういう時間がある時は前日から憂鬱だった。

「汚れる」

授業中に投げられる消しカスには、手で前髪を抑えて目を隠した。
涙目になっていることを気付かれたくなかった。
だから何にも気付かないふりをした。

「あいつ気付いてないし。次はこれ投げようぜ」

辛かった。辛かったと認めるのも辛い。


叫んでしまいたかった。

私にも心があると泣きわめきたかった。

家では投げやりに適当に笑った。
母も父も優しい。
事情を話して行きたくないと言えば休ませてくれるだろう。

だけどこんなことされてると知られて、変な目で見られたくなかった。それは悔しい。

精一杯のプライドは学校へ通うこと。
精一杯の自尊心は相手を無視すること。