お隣りさんで、いつつ年上のお兄ちゃん。

「──オウにいーっ」

それがオウ兄だった。


私の家のすぐ隣り。
しかも自室のベランダからの距離はほんの少し。
漫画みたいな──オヤクソクな感じの距離。

「シラン」

すぐ向かい側のベランダに現れたのは、オウ兄。

黒髪のなかなか格好良くハねた天然パーマ。

全体的に細い感じの顔立ちなのだが、髪型のせいか少し派手めな感じ。

Tシャツにジーパンというラフな格好で出てきた。

「オウ兄ー、勉強教えてください」

ベランダで私は、軽くぺこっと頭を下げる。

「はいはい良いよ」

面倒見が良い彼に、私は懐いていた。
良いよと言ってオウ兄は上手く勢いをつけて飛んで私の部屋のベランダに渡った。

「さて、何の勉強からかな?」

「あー…やっぱり人生の勉強からお願いします」

自室に入り、机に向かった。
     ラクガキチョウ
オウ兄は英語の教科書を出して私に言う。

「わかった。英語ね」

「うわやっぱ勉強中止」

「教えてあげるから。──まずここは」

面倒見が良くて、頼れるお兄ちゃんみたいな存在。

名前は忘れたよ──オウ兄。