エングラム







最後の一曲が、終わった。


「…日が…」

もう17時を軽く過ぎたが明るいな、と思った。

空を仰いでいた顔を、クラスペディアの三人に向ける。

シイとユウ、ケイが二人組の女の子と話していた。

先程ライブを聴いていた中で見た姿だから──ファンの子だろう。

茶髪にパーマと明るい色の派手な服、よく雑誌やそこらにいるような可愛い女の子。

「…何よ、」

シイが呼んどいて何話してんだよ私ここにいるんだけど。

少し不機嫌になって、むぅ、と彼を見つめる。

ケイの可愛い笑顔と、ユウの爽やか(多分)な笑み。
あと大人っぽいシイの笑顔。

近くの壁にもたれて、それから視線を外した。

しばらくすると、嬉しそうな表情をした女の子たちが離れていくのが横目に見えた。

「………んー」

私は壁にもたれたまま、彼らに声をかけようか悩む。

いやほら、前回たまたま話しただけだし。
友人かと聞かれたら答えに迷うし。

「………帰ろうか、な」

とか言っても、私は動かない。

あぁ期待だ。

私から話し掛けないから、あなた話し掛けにきてよ。
何も言わないけど気付きなさい。
そんな感じじゃないか。