エングラム




そしてその曲は、加速する。

一番盛り上がった部分では、ユウがギターに走らせていた手を胸元で叩いて聴衆を見遣った。

意味を理解した聴衆は、ノリよく手を叩いた。

その拍手の中で、響く彼らの声。

その曲が落ち着くと、ケイが指揮を振るように手を動かし拍手を止ませた。

…あんな細身の体で、よく唄を支配できるなぁ。

当たり前かもしれない。
彼らの音は、体を乗っ取る。

「今の曲は“ライスパール”でした。──あ、変かな?」

だよねねぇ、うん、けどねぇ。とケイが肩を竦めて笑う。

「よしじゃあ、時間も限られてるから──…」





そして彼らの唄が、空間を支配する。