エングラム




   シラン
「──紫蘭の花言葉は、」

真っ直ぐ、シイの目は私を写す。


「美しい姿、だ」


どういうつもりで、彼はその言葉を口にしたのだろう。

「似合わない名前ですよね」

震えそうになる声に、力を込める。

「私は醜いのに。こんななのに…!」

勝手に口が動く。

誰か口を塞いで。
私の両手は私の耳を塞ぐから。

もう嫌だ。
もう嫌になってるんだ。

どうしてなの。

「私は死ななきゃ駄目なの…!」

いつものように、何も気付かないフリして笑えなかった。

シイの声が、鳴った。

「嫌だ」

「息苦しいの!疲れたの!もうあの人もいない!」

私は続ける。

「死んだって良いことないけど生きてても良いことないんだ!だったらこんな場所から逃げたい!」

叫ぶのは心。

「今まで逃げなかったんだから!もう十分でしょ!褒めてよ!もう良いじゃん!」