エングラム




「駅前でライブ終わった後、ここ来ようとしたよな?」

コクンと頷く。

「あぁ死ななきゃ、って伝わってきたんだよ。…心読めないように、オフにしてたのに」

吐かれたのは、溜め息。

その溜め息に、一瞬体が強張った。

「ごめん」

素早く悟ったシイは、悲しそうに笑って謝った。

違う。違うんです。
私が悪いんです。

「お前は悪くない」

彼はフェンスに預けていた背中を起こした。

「何が…!」

私は自分の手に力を込めた。

「私に入り込もうとしないで…!」

吐き出したのは、心。

静かに、それでも強く。
少し涙目になっているのが自分でわかる。
だけど負けない。
涙を抑えて真っ直ぐ、見る。

「けど入り込まなきゃ──」

シイが私の元まで歩いてくる。

「──助けられないんだ」

その目は、私が求めているあの人と同じ目。

嗚咽を上げそうになって、口元を両手で覆った。

助けを求めてる私に、気付かないで欲しかった。
だけど気付いて欲しかった。

そして、シイは気付いた。

だから