分からないことこそが、忘れられたことこそが、彼のチカラ?
よく分からないが、とりあえず頷いてみせた。
「シランちゃんユウには気をつけてね」
アーモンドの目を大きく開いて、ケイが言った。
「おやおや、心外ですね」
そう答えるユウは楽しそうだった。
「……シラン」
シイの低い声が私の名を呼んだ。
「は、はい!?」
不意に呼ばれたので、思わず肩がはねた。
「許可なしに呼び捨てってマナーがなってないようシイ」
冗談なのか真面目なのか、今更のことをケイが言った。
「あ、いやその…」
私は手を振って呼び捨てでも構わないと続けようとしたが、
「…シ、シランちゃん…」
頬をピキリと引き攣らせて地獄の底から出たような低い声でシイが言った。
「………」
ケイとユウ、私と三人分の微妙な沈黙が落ちる。



