エングラム




「楽器はここ置いといて良いですか」

「あぁ」

シイが返事をして、その部屋を出る。

リビングに戻ろうかなと、階段を下りようとした私の手が捕まれる。

「シーラーン」

あ、なんか嫌な予感。
シイが見せたのは悪戯っけな笑み。


「お風呂どうしよっか。なあ?」


やっぱりシイからは、花の甘い香りがする。


「シ、シイ先にどうぞ」

捕まれていた腕をほどき、赤い顔を少し背けながら言う。

「一緒に入らないか、ん?」

出たお約束!だけど無理だ!

「結構ですぅうっ!」

そう言いながら、急いで階段を駆け降りた。

「待てっ!」

シイが私の後を追って階段を下りる。

後ろからの足音に怯えながら階段を下り終えた所で──

「ぅ、ひゃあ」

シイに捕まる。
それも肩をガシッと捕まれた形で。

「ふはは、確保」

「そんなキャラでしたっけぇえ!?」

「冗談だ」

さんざん振り回されたが、とりあえず私が先にシャワーを浴びることになった。

覗かないでくださいと言うのも墓穴を掘りそうなので言わず、脱衣所に入る。