エングラム




「オレは?」

思い出していたら、シイが言った。

「………えっと…」

ドラム見てなかった。

「この曲のリンゴ・スターのドラムの跳ねるような音素敵ですよね!」

「話逸らされた。──あぁ」

リンゴと比べると、前に演奏したシイのドラムは若干重かったかもしれない。

けどその分迫力があるのは、シイの良さだ。

「お、褒めてんのか」

「読まないでください」

ごめん嬉しくて、とシイが少し笑った。

そして一呼吸して落ち着くと、シイがリズムを刻みスティックを叩いた。



バンドの華、ギターはいないがそれなりにノリ良く弾いた。

曲のリズムやノリを決めるのはドラムだと、私は思う。



シイも私も、音は小さかったがとにかく楽しかったから良し。


汗もかいたし、とシイが終わろうと言った時には21時を少し過ぎていた。

楽譜をまとめていたら、シイが突然窓を開けて

「あ」

入ってきた風に、数枚の楽譜が舞った。

「あ──ごめん」

シイが再び窓を閉め、楽譜をかき集めようとしゃがんだ。

「いえ」

そう言いながら散らばったそれを拾う。

──と、シイが一つの曲の楽譜に目を留めた。