エングラム




「え、レトルト!?」

服を貸してくれる云々より、まず目の前の食事の問題に食いつく。

夢がなさすぎると唇を尖らせた。

「いやこれだったら安全だろ」

「何の心配ですか」

真顔で言ったシイが持っていたレトルトカレーのパッケージを奪う。

「肉じゃがとか!」

とりあえず定番の名をあげる。
予想外に、明るい声が出てしまった。

片手を腰に当てたシイが、笑みが混じった息を吐いた。

それから冷蔵庫を開けて、中を覗きながら答えた。

「……材料ねぇ」

一緒に買いに行くのも夫婦っぽいなとか思ったが、ここは諦めて別の料理をあげる。

「…チャーハン、とかどうですか?」

これだったら。

期待を込めた目で彼を見る。

「……良いな、それ」


その一言で、私たちのチャーハン作りが始まった。