エングラム




理解した瞬間に。
──…今夜…!
色々と想像してしまった。

「明日ケイの見舞いに花でも持ってくか」

ナイスなことに、今の想像は読まれていなかったらしい。

「そうですね!病室明るくなりますよ!」

清潔さを湛える白い病室は、逆に寂しい。
ありふれてるけど、やっぱりそうだ。

クラプトンの声を聴きながら、花を見る。

一輪一輪、どれも綺麗で癒される。

「シラン電話するか」

シイが自分の携帯電話を私に渡した。

「……え」

何故か、いよいよだ、と固まってしまった。

「オレから言おうか?」

受け取った携帯電話を奪われ、慌てて奪い返す。

「自分で言いますっ!」

クラプトンの艶やかな夜を歌う声を聴きながら、番号を打ち込みかける。

プルルル、と慣れた電子音が別のものに聴こえる。

シイは気を利かせたのか、BGMの音量を少し下げた。

そして電子音が、ぷつっと途切れて。


「もしもしっ、お母さんあるいはお父さん!?」

息をつかずそのまま畳み掛ける。

「今日友達の家泊まるね!ほんと良い子だから今度紹介するっ」

お母さんあるいはお父さん、って言っちゃったけど。

お父さんだったっぽい。