エングラム




「…………はいっ!?」

「オレんちから電話すれば良いだろうし…って」

シイが私に、悪戯っけな笑みを向ける。

「やーらしーい、まぁ年頃だしな」

「年頃なんかじゃないですううっ」

読まれてた。
お泊りイコール何々、なんて考えてたのバレた。

「まぁオレだって男だし……なぁ?」

笑ったままに、シイは私の肩に手を置いた。

体についた癖。
思わず体が跳ねた。

「優しくする」

「止めてくださいいっ」

からかわれてる。遊ばれてるパターンだ。
分かってるけど反応してしまう。

「…ユ、ユウのギターは」

「置いときゃあいつ取り来るだろ」

シイは私が抱きしめていた、ベースが入っているケースをさりげなく手に取る。

「無理は言わないけど」

「い、行きたいです!」

引かれると押してしまう。
鼻息荒く言い切った私に、振り返ったシイの眼鏡が少しズレた。