エングラム




返す言葉のひとつ、見つからない。

「……もうさあ」

黙って私たちは聞く。

「ずっと前から分かってたのに。それこそベース始めた時から」

未来が見えるチカラを持つから、始めた瞬間から終わりが見える。
どんな希望で絶望だろうか。



「もう指、前みたいに動かないって…!」


クラスペディアの心臓が動かないと。


「前から今日の分まで泣いてたのに…また泣きそう」


だんだんと歪む声に、耳を塞ぎ目を背けたくなる。

Come Togethrが終わり、次の曲に移る。

──Real Love。

ジョン・レノン作詞作曲の、事実上ビートルズ最後の曲だ。

これが本当の愛と、歌う最後の曲。



「……明日は馬鹿な話をしましょう、今日は帰らせていただきます」

ユウが椅子から立ち上がり、ケイと目を合わせることなく扉に向かった。

「うんバイバイ」

ケイの声が──今にも泣き出しそうだと気付く。

「また明日な、ケイ」

「ケイ明日来ます」

シイに続いて明日と告げ、ケイに手を振る。

「うんまた明日。──楽器廃ビルに忘れないようにね」

なんでそれを、は愚問。
、、、、、、、、
だってケイだから。それが答えだ。