エングラム



しまった。嫌な質問をしてしまった。
自己嫌悪に陥った瞬間、ごめんなさいと、口が勝手に動きそうになった。

だが謝ることは卑怯だ。

静かな空気を、ケイが砕く。

「ライブどうだったあ?」

「分かっているでしょうに、皮肉を」

金髪をくつくつ揺らし、それこそ皮肉げにユウが答えた。

「困るし、全然だったぞ馬鹿」

シイはそう言うと、ケイのギブスで固められた右足まで手を伸ばし、軽く叩く。

「シランちゃん居たからどうにかなったでしょ?歌はシイでもいけるし」

「ケイじゃなきゃ」

思わず口を開いていた。
途端、視線を向けられる。

「…ケイがいなきゃ“クラスペディア”じゃないです」

私はクラスペディアじゃない。
そうなりたくないし、彼ら以外のクラスペディアも認めない。

「ありがとう」

ケイが笑う。
客をめろめろにしてしまう、天使の笑顔で。

けどそんな笑顔も、今の状態じゃ痛々しいだけだ。

また、静かになる。
ケイは困ったなあと笑ってから言う。

「──あ、ユウそこのプレーヤーで曲流して。CD入ってるから」

「これですね」

ユウ近くに置かれたそれをコンセントに繋げ、電源を入れ再生を押した。