エングラム




──足と腕が…。

何か言わなければと言葉を切って貼り、出す。

「あ、どうも…」

それだけ精一杯言うと、ケイのベッドに寄る。

「ケイ、お前」

シイが続ける前に、ケイは変わらない笑顔で言う。
 、、、、、、、、、、、
「車にぶつかる事実も忘れてずっと張り切っちゃってたのになあ」

何かひっかかる言い方に、顔を歪めそうになった。

「ごめんねシランちゃん」

ケイが私に顔を向ける。
透き通った亜麻色の髪。
よく見ると、顔には擦り傷がある。

「君が舞台袖で震えることも。君が代わりになってくれることも」

たまらず、隣にいるシイの服の裾を掴んだ。

「全部。ずっと分かってた」

「──ケイ…」

ケイは窓の外に視線を外した。
日差しに、軽く目を細める。

「出会う前からずっと。君の顔も知らない時から。ずっと謝ってた」

包帯が巻かれた、ベーシストの右腕。

──出会う前から、なんて。
どれほど痛かったか、と私は胸を抑える。

「……痛くないですか…?」

愚問。出たのはそれ。

「痛い、かな…」