エングラム




「私的には入院のイメージは痔ですね」

ユウがにこにこと言った。

「痔っておい嫌なもんあげんな!」

シイがすかさず突っ込んだ。

タクシーの車内だと言うのに、私たちは変わらない。

ただ──ケイがいたらこうだったと思うだけだ。




「…──病院着きましたよ」

タクシーの運転手が言った。
シイが料金を払うと、タクシーを出る。

「ケイの病室はどこだ、ユウ」

「受付で聞いてください」

いざ病院を目の前にすると、気が焦る。
早口になっているのに、本人は気付いているのか。

足早に病院の受付に寄る。



そこでシイが私の腕を何故か掴んだ。
斜め上にある彼の目は、私と視線を合わせない。

「シイ──」

ユウが受付にいた女性に、尋ねる。


「事故で搬送されたケイ──鈴木、惠太はどこに──…?」


耳を、疑う。


「事故…?」

私の腕を掴むシイに問う。

「事故ってどういうことですか!どういう意味なんですかシイ!」

場も構わず語気を強めて聞いた。
ケイの本名も今初めて知ったが、それ以前に。