──そして、ただひとつが欠けたまま、クラスペディアの演奏の時間になった。


目が眩みそうな程のライト。
見たことのない人の波。
浴びる光と汗、視線と音。


ステージの袖で待機してる時、体が小刻みに震えていた。
恐怖だと気付いてくれたシイが、頭を撫でてくれた。


いきなりだったし、私はクラスペディアじゃない。

だけれど舞台の上でベースの低音が聴衆の心臓を掴んでいることに興奮し、粘り着く熱気の中にいたのは覚えている。


霧中で、夢中だった。


ケイの透き通った声でなく、シイの声も大人の色気を出していて。
盛り上がって、いたと思う。

ユウのギターが、いつもより鋭い音を出していた。
ライトで輝く金髪は、王冠を思わせた。


──もう、何がなんだか…。


ただ、いつものきらきらした唄じゃなかった。
ラストの一曲を弾いてる途中で気が付いた。




その日、出た結果。
いや、結果といえるものは何一つ出なかった。