エングラム




「………なっ」

シイが私の頭を撫でていた手を口元に持ってきた。

「あ」

声を漏らしたのは、私。
やばいすごい恥ずかしいこと考えちゃったよ。

シイの赤くなった顔。

伝わってしまったと一目で分かる。

「不便なのか便利なのか分からないチカラですねシイさん…」

頭を抱えながら言った。

「いやそんな言い方すんな…」

シイは口元を多い、視線を宙にさ迷わせながら答えた。

「オフにしてください…」

赤い顔のシイが可愛くてたまらない。
そんな想いもつつぬけだろう。

「分かった…」

何が変わった、という訳ではないが。
オフになったのだろうと安心する。

少しお互い時間を空けて、落ち着いたところで。

「Here,There and Everywhere」

シイの服の裾をつまんで、小さくリクエストする。

「…なんか恥ずかしいよなこのやりとり…」

シイが足元に落とした言葉が聞こえず、え?と聞き直す。

「いや気にすんな──」

そして小鳥のさえずりとも言えるような私にしか聞こえない声で。透明な声。

歌詞の意味を思い出しながら、私はその声に耳を澄ませた。