エングラム






ケイにそう言われて、今日の練習は終わった。

私が道具を片付けている間に、彼らは今日のライブは中止にしようかと話していた。

「え、今日ないんですか?」

コードを片付けながら私は思わず聞く。

「はい、そうなりました」

ユウが私に答えた。
なんでだと、少し残念だと一人のファンとして思う。

「まぁ、深い意味とまではないけどねぇ」

ケイが肩を竦める。

「あ、シランちゃんハコでやるライブって聴いたことある?」

「ハコっ!?」

確か演奏する会場をハコと言うことがあるのは知っていたが、思わず聞き直してしまった。

「うん、ハコ」

ケイが頷く。

一瞬だけ、段ボール箱に彼らが入って演奏する姿を想像してしまった。我ながら変だ。

「なにその不思議な演奏」

シイが悪戯っけな笑みを出して言った。

「だから読まないでくださいっ!」

そう私が言い返して、今日も廃ビルを4人で発った。