エングラム








ケイからスラップの練習をしながら聞いたが、今はバンドコンテストに向けて土曜以外も彼らは集まっているらしい。

出場が決まったからね、と教えてくれた。

「スタジオも借りて練習中なんだあ」

「へぇー、やっぱ全然違うんですか?」

スタジオ。よく聞くけどどんな感じなんだろう。

「うん。──はい口動かしつつ右手動かそうっ」



スラップ。全然出来ない。



「まぁ一ヶ月は掛かるだろうねー」

ケイは続けてそのバンドコンテストの日程を私に教えた。


「絶対見に行きます」

手を休めながら私は応えた。
ケイはにこにことしながら言う。

「ありがとう。あ、その日までに今日渡した曲一通りやろうね」

「…………」

無理です。
そう言いそうになる。本当に自信がないのだ。

今まで聴いていただけの彼らクラスペディアの音符がいざ自分の元に飛び込んでくると──たまらなく鮮やかで難しい。

「スラップは家でもね。アタックの命中率上げといて」