エングラム




親指と人差し指を使い、ビーン!と。

普通にピックや指だけで弾くのとは、音が全然違う。
何て言うか──鋼、みたいな。

「はいとりあえずこんな感じ。毎日練習しても一ヶ月は掛かったなぁ」

「一ヶ月!?」

弦から指を離したケイの言葉に驚く。

「けど格好良いでしょ」

えへへ、と笑うケイが可愛くてキュンとする。拉致して弟にしたい。

「ケイ気をつけろ、お持ち帰りされるぞー」

「読まないでくださいい!」

私の考えを読んでケイに警告したシイに突っ込む。やめて恥ずかしい。

「あははー、でシランちゃん解放弦をサムしてから──」

無茶苦茶テキトーに笑ってあしらってから、直ぐにケイは私の指導に移った。

「右手見ながらで良いよう。けど段々見ずにいこー」

スラップ、難しい。

ベースって奥が深いとは思ってたけど、こんな技法あったんだ。

「4弦から3弦、順に2弦1弦──…」

ケイの言葉を聞きながら指を必死に動かす。

「──アタック命中させんの難しいよね──」

そう言って私に優しい重みがかかる。