「ぷっ………うふふっ」
ケイが口元を押さえて肩を揺らした。
私は飛んできたスティックを握り締める。
「……シーイー…」
漫画だったらスティックをバキッと真っ二つに折っているところだ。
「…すみません…手が汗で…」
シイがドラムセットの間から立ち上がり、表情を引き攣らせて私からスティックを受けとった。
「チョッパー…ふっ」
受けとったシイがそう小さく呟いたのを聞き漏らさなかった。
「だってチョッパーって言ったら…!」
「医者のトナカイだよな、そうかそうか。あいつ可愛いよな」
シイは悪戯っけな笑みを私に向ける。
スティック奪ってやろうか、と考えたが彼にはお見通しだろう。
むぅ、と唸るだけにしておく。
「ほら、夫婦漫才もここまでね。チョッパー…スラップについて教えるよぅ」
うんこれからはスラップって言おう、と決意しながら頷く。
「はいシランちゃんベースよぅぅいっ」
私はベースをストラップで肩に掛けて慌てて用意をする。
「んじゃあまず聴いてね」
ケイは赤いベースに光を走らせる。



