学校もないのでピアノを触る機会もなく。私はひたすらベースに向かっていた。
テレビで音楽番組を見ると、ベースの音がよりはっきり聴こえるようになっていた。
私は彼らクラスペディアオリジナルの曲の楽譜を見せてもらったことがない。
ケイのベースを真似るテクニックも耳もない。
一緒に練習しているんだ。良いじゃないか。
だがそんな良いわけじゃないだろう──私はクラスペディアじゃない。
だが土曜日の練習で──私はケイから手書きの楽譜をもらった。
「はいシランちゃん」
その言葉と共に数枚の楽譜を渡された。
ビートルズかななんて予想してたもんだから思わず目を見開いた。
「これ…」
ケイの少しだけ高い位置にある顔を見る。
「とりあえずライブでやる予定の、数曲」
「え、もしかして…」
ライブに出ろって言うことなのか──そう思ったが。
「楽譜頭に入れといて聴くのと、そうじゃないの。楽譜知ってて聴く方が美味しいでしょ?」
言葉の意味は、やはり私は聴衆ということを指している。



