エングラム




オウ兄にとってこの曲はどんな意味か、教えて。

そう思いながら、再びDESPERADOを流す。

意味を知ると、先程と違う感じにまた聞こえる。

うん確かに──これはならず者を唄う曲なのだろう。

とんとんととん。
窓を叩くその音は聴こえなかった。



意味、分からないなぁ。

曲の最後の一音を聴いてから改めて思う。

そしてハッと気付いた。


──ケイから借りた和英辞典。


「自分で訳せってことですかケイ…」

頭の中のケイが、きらきらの笑顔で私に手を振った。皮肉。


英語は苦手だ。

3分37秒の時間に漂う言葉を自分のものに変える。

考えるだけで頭が痛くなりそう。

だけど──…だけど。


仕方ないなあ、オウ兄。

私は適当なノートを用意する。

あなたの言葉を知りたい。




紙袋に入っていた手紙のことを私は忘れていた。
それが机の上で私を見ていた。