そんなことに訳も無く安堵して──正座をし線香に火をつける。
そのまま目をつむり手を合わせる。
「もう一年も経ったわね」
その声に目を開き、顔を上げる。
「今までね、オウガの部屋を整理できなくてそのままだったの」
オウ兄のお母さんは重くぽつぽつ言葉を落とす。
「今日整理したらね──これ」
私に可愛いげのない紙袋が突き付けられる。
その紙袋に付箋で、シランへ、と書かれていて──視界が揺れた。
「今日見つけたこと。今日初めてシランちゃんが来てくれたこと」
声に涙がにじんでいた。
私は戸惑いつつ紙袋を受け取る。
「オウガが何か考えていたのよね、きっと」
オウ兄のお母さんは、目元の涙を指で払いクスリと笑う。
私も頼りなく笑うと、紙袋を持つ手に力を込めた。
「ありがとうシランちゃん」
余計なやり取りも言葉も必要なかった。
オウ兄の想いはしっかり受けとったのだから。
「ありがとう…ございます…」
涙も要らなかった。
オウ兄がくれた紙袋を抱いた。
私の名前が書かれてハラリと付箋が剥がれた。
それを拾い、その文字の書き方に懐かしさが込み上げた。



