エングラム




私がそう決意を固めて、そして彼らの今日の演奏は終わった。


演奏が終わってシイの所に行こうか少し迷って──彼がこっちへ来いと見てきたのでシイのもとへ行った。

「お疲れ様です」

そう言ってタオルを渡した。

「ありがとう」

ドラムは全身を使う。
夕方とは言え夏の中だ、彼は汗をかいていた。

「今日、オウに手合わせんのか」

「読めるチカラ少しはオフにしてくださいオフに」

心の中でプライバシーに別れを告げた。

「プライバシーは守るつもりだ」

「言ったそばからぁっ!」

「で、行くんだろ?」

急に真剣な声で尋ねられる。

「…はい」

そう返事をしたら、ケイがボーイソプラノの声で私を呼んだ。

「シランちゃんはいっ」

「……………」

笑顔で渡されたのは、英和辞典。

「これ使って」

一体何にだ。

反射的に突っ込みそうになった。
こんなの持ってたんですか。
何に使えと言うんですか。

「ケイ…シランさん固まってます」

無表情で固まったままの私を笑いながらユウが言った。