エングラム








そんな甘い彼も、スティックを持つと一変。
今日のライブでも華麗なスティック捌きを見せる。


「まずは──」

マイクを持ったケイが曲名を告げる。


相変わらず鋭いユウのギターの音色。



きらきらしてる、三人。


眩しいぐらいの音。




──オウ兄もこれ聴いてれば、少しは何か違ったかもね。

今日はケイが“死を歌おう”などと言ってたからか、亡くなったオウ兄を思い出さずにはいられない。

マインドコントロールみたいなもんですか違いますね。

──そういえば。

もう一年。私はオウ兄のために手を合わせていない。

今までの自分も何気に死んでたからなぁ、と思って笑いそうになる。

彼らの音が私を生き返してくれたのだと。
そう思うと余計に鮮やかに音が光った。

今日帰ったら、オウ兄の家に行こう。
手を合わせて線香に火でも点そう。

決して仏壇に話し掛けたりはしない。
オウ兄はそんな所にいないから。