エングラム




孤独なギターの音色が、いつの間にか他の音と寄り添っている。

声には慈愛。優しさが。けど迷いが。

「これはクラプトンが女優ローリ・デル・サントの間に生まれた少年、コナーに捧げた曲だ」

だから優しいんだ。
父親の声で聴こえるんだ。

けどどこか寂しいのは──

「コナーは幼いうちに死んでしまったんだ」

シイが答えた。
          天国
だから、タイトルにHEAVENなんてあるんだろう。

ミュージシャンは、死んで終わることなんかないんだ。
天国にも、唄を。

「…音楽やる人って、どこまでも生きてますね」

シイが笑った。

「生きてる限り、唄うからな」

ギターの音色が、哀しく愛を唄う。
詞に込めた気持ちって色褪せないもんだなぁ。


クラプトンの歌声の中で思った。

「シイってクラプトン好きなんですか?」

「あぁ」

シイがいつもの低い声で答える。続けてサラリと彼は言う。

「お前の方が好きだがな」

自分の顔が赤くなるのが分かった。