エングラム




ケイから貰った楽譜を出す。
THE BEATLESのCome Togethrをまだ完成させてないが、別のものを出した。

手書きの楽譜。

──3つのバイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ。

通称、パッヘルベルのカノン。

誰でも知っているであろうクラシックの名曲。

今日の練習の時に、ユウがギターで弾いていた。

エレキギターで聴いたそれは、ピアノのものとはやはり違う。
なんていうか、高貴だ。

ピアノの弾いて煌めく音でなく、投げて光ったような伸びる音。

私が羨ましそうに見ていたのに気付いたユウが、編曲したものをくれた。

思い出すメロディ。

試しにひとつ、音を投げてみる。

ギターより一億ターブ低い音。

「できるかな」

頭の中でバックミュージックを流し、拙い指の動きで歌を辿る。

最初に低音をたどる二小節の主題。



──音に溺れる。