エングラム






──しばらくして体を離し、別れて私は自宅へ帰った。

ベースを背負いながら、少し前のことを思い出す。

送ろうか、という言葉を丁寧に断った。

親にばれちゃう、という私の考えが伝わったのだろう。
わかったと返事をもらった。

「シラン明日の日曜日は暇か?」

「暇ですけど…」

まさかデートの誘いっていうあれ?
人生初じゃん!
内心ウハウハなのはお見通しだったらしい。

「あぁ、デートだ」

にっ、と笑われた。

「読まないでくださいっ!」

とか言いつつ、場所はどこだろうとか服はどうしようとか思ってしまう。

「オウとの約束の代わりだ」

「オウ兄との?」

「まぁオレの店だ」

「うわぁシイの花屋さんですか!?」

相手が自分を好いてくれてる、それが確かに伝わる空気。
それは今まで感じたことなく、心地好くて力が抜けた。


…そんな話をしていたから、明日の服装について考える。

「ワンピースも良いかなあ」

独り言。


「…しかし…」

一人の影を連れて、思い出す。