「オレ花屋やってんだ。そうある日、店に来た」

一人の客を、オウ兄を覚えていたんだ。
その私の心を読んで、まぁ、とシイは曖昧に答える。
    オウガ
「名前は桜雅だよな?」

私は頷く。そう、オウガ。
私にとってはオウ兄でしなかったから、記憶の片隅で名前は眠っていた。

「オウガさんも──」

息を吸って、シイが言う。

  チカラ
「超能力、持ってたんだ」


──ちょうど、乗車駅だとアナウンスが告げた。